「ググる」が通じない世代の情報収集 — SNSで雰囲気を、AIで構造を、Googleは引用元になる

★ 0
🎧 この記事を音声で聴く(14:04)

最近、僕より若い人と話していて、「あ、もう前提が違うな」と感じる瞬間があったんです。

お店を探すときに、まずInstagramを開く。これはもう数年前から知ってはいたんですが、改めて目の前で見ると、僕の世代の感覚との距離感が結構ある。Googleでお店の星評価を見て、ついでに口コミテキストを軽く流し読みして決める—そういう動きをしない。アカウントの投稿一覧をスワイプして、店内の雰囲気・実物のメニュー写真・客層を視覚的に把握して、それで「ここ行こう」と決めている。

僕は1993年生まれで、いまちょうど30代前半なんですが、この行動を見たときに「評価を読む」から「雰囲気を見る」への移行が起きてるんだなと。他人の言葉に翻訳された情報を読み解くのではなく、一次的な視覚情報を自分の感覚で判断している。

前回のジャーナル、「人はなぜ『自分で調べろ』と言いたくなるのか」では、「ググれカス」と言いたくなる側—つまり情報を持っている専門家や年長者の心理を解剖しました。今回はその対の視点で、そう言われている側、つまり「ググる」が通じない世代が実際に何をしているのか を一次データで追ってみます。

先に結論を書いておくと、彼らは「ググらない」わけじゃないんですよね。Googleも使うんです。ただ、Googleは数ある選択肢の一つに格下げされていて、用途によって他のチャネルと使い分けている。そして、その使い分けの裏には「タイパ」みたいな効率主義じゃなく、もっと別の動機があった、という話をします。


数字の事実 — 「ググる」は本当に通じないのか

まず数字から確認していきます。

SHIBUYA109 lab. の2025年調査(15-24歳女性413名対象、2025年7月実施)によれば、行きたい場所や体験を探すときに使うチャネルの順位はこうなっています。

順位チャネル利用率
1Instagram64.6%
2TikTok39.0%
3X35.1%
4動画配信サービス30.5%
5検索エンジン28.8%

検索エンジンが5位。これ、結構衝撃的な数字なんですよね。Googleが必須インフラだった僕らの世代の感覚からすると、「お店を調べる」と言ったらまずGoogleマップだったわけで。それが今や、Instagram、TikTok、X、動画配信の後にようやく出てくる。

検索の主役交代を示すデータはもう一つあります。サイバーエージェントGEOラボの「生成AIのユーザー利用実態調査 第二弾」をMarkeZineが解説した記事(全国10〜60代9,278名)によれば、10代の検索行動でChatGPTの利用率が42.9%、Yahoo! JAPANの31.7%を大きく上回ったそうです。検索という行為そのものの内訳が、すでに変わっている。

米国のデータも揃っています。Pew Researchが2025年12月に発表した調査では、米国13〜17歳の約2/3がチャットボットを使用、約3割が毎日使用。ChatGPTが59%で圧倒的、Geminiが23%、Meta AIが20%でした。

ここまで読むと「Z世代はもうGoogle使ってないのか」と思いそうですが、実はそう単純ではない

株式会社movが2023年に実施したお店検索の調査(15〜79歳996名、MarkeZine掲載)によると、10〜20代でも「店を検索する際に使うツール」の1位は検索エンジン(23.15%)で、SNS(20.63%)が僅差で続く構図でした。ただし飲食店に絞ると、10〜20代の1位はGoogleマップに転換する。「何を探すか」によって、Z世代の中でもチャネル選択が分岐している実態が見えます。

この「ジャンルで使い分ける」構図は、よく引用される「Z世代の40%がGoogleでなくTikTok・Instagramで検索する」というGoogle幹部 Prabhakar Raghavan の発言とも整合します。元の発言は2022年のFortune Brainstorm Techでのもので、文脈は 「ランチを探すとき」限定、しかも”almost 40%”という曖昧な数値だった。これを「全検索の40%」と一般化して使うのはEconsultancyも誤用として指摘しています。

数字を並べてみて見えてくるのは「ググらない世代」ではなく、「ググるけど、それだけでは終わらない世代」という像です。Googleは使う。でも検索エンジンは数あるチャネルの一つに格下げされていて、何を調べるかによって最適なチャネルを切り替えている。これが今回の前提になります。


観察 — 検索の3段階進化

ここで、僕なりに整理した検索の進化を提示してみます。

最初に断っておくと、これから話す「検索1.0・2.0・3.0」みたいな三段階論は 学術的に確立した呼称ではありません。Web 1.0・2.0・3.0 という言葉自体は2000年代に業界で流通した世代論で、それを「検索」にスライドさせる呼び方も独自の整理です。これは僕のフレームだと思って読んでください。

その上で、検索行動には大きく3段階の進化があったと感じています。

段階時代検索の形リテラシー
静的検索1998〜2010年代前半キーワード→青リンク検索ワード選びの上手さ
動的検索2015年〜現在SNS・動画タイムラインタグ操作と視覚判断
対話的検索2023年〜現在自然言語の往復意図の言語化と再質問

静的検索は、Web 1.0時代のキーワード検索です。「東京 ラーメン おすすめ」みたいな短い語をGoogleに投げて、青いリンクの並びから判断する。この時代のリテラシーは「検索ワード選びの上手さ」でした。語彙が貧しいと欲しい情報に辿り着けない世界だった。

動的検索は、SNSと動画プラットフォームの台頭で生まれた検索です。Instagramのハッシュタグ、TikTokの検索バー、YouTubeのレコメンド。Z世代の周辺では「タグる」「タブる」「ディグる」みたいな新しい動詞も話題に上るようになっています。投稿を眺めて雰囲気で判断するので、キーワードの設計が要らない。

対話的検索は、生成AIで現実化した検索です。学術的にもZamani・Trippas・Dalton・Radlinski の “Conversational Information Seeking”(arXivプレプリント、2023年1月最終版)という分厚いサーベイ論文があって、対話型検索を 「ユーザーと情報システムの間で連続的に行われるやり取りの連鎖」 として体系的に定義しています。Perplexityが自社を「search engine」ではなく、「answer engine」と呼んでいるのもこの流れです。

注目したいのは、動的と対話的が並行して若年層を捉えていることです。普通は技術が世代交代するんですが、SNS検索とAI検索は両方とも今同時に伸びている。次の章では、そのことが何を意味するかを掘ります。


構造 — なぜ「動的」と「対話的」が同時に来たのか

動的検索と対話的検索、この2つには共通項があります。

それは、「キーワードを上手く考える労力からの解放」 なんですよね。

「ググる」という行為が必要としていたものを分解してみます。

労力種別内容
言語化自分が知りたいことをキーワードに翻訳する
キーワード設計ノイズを排除する語の組み合わせを試行錯誤する
ノイズ排除SEO汚染や広告ページを見抜く
読み比べ複数の青リンクを開いて情報を統合する

これ、地味だけどそれなりに高度な認知作業なんです。前回の「教えるのが上手い人は何が違うのか」で扱った「知識の呪い」と似た話で、検索リテラシーがある人にとってはこれが「直観」になっているけど、初学者にとっては毎回考える必要がある負荷だった。

動的検索(SNS)はこの労力を別の形に置き換えています。投稿を眺めて雰囲気で判断するので、言語化が要らない。タグもアルゴリズムが推測してくれる。写真の方が、星評価のテキストより信用できるという直感的判断で、ノイズ排除と読み比べが視覚処理に圧縮される。

対話的検索(AI)も同じ問題を別の方向で解いています。「ふわっとした意図」を自然言語で投げれば、言語化はAIが手伝ってくれる。再質問でクエリが洗練されていく。複数ソースの統合もAI側がやってくれる。

学術的にも興味深い研究があって、CHI 2023の”Practicing Information Sensibility: How Gen Z Engages with Online Informationでは、Z世代は「探しに行く」より「流れてきたものに反応する」(encounter型)情報行動を取ることが示されています。彼らは情報リテラシー戦略を知っていても、家族関係や社会的圧力、関連性判断のために使わない傾向があるとも報告されています。

つまり、「ググる」が前提としていた 「能動的に探しに行く」モデルそのものが、若い世代では別のモデル(encounter型・対話型)に置き換わりつつある。これはGoogleが2006年にOxford English Dictionaryに動詞登録されたときの世界観とは、もうだいぶ違う風景なんです。


自問 — 「ググらない世代」は本当に存在するのか

ここで一度、自分の論を疑ってみます。検証ジャーナル型を名乗っている以上、自問パートは外せないんですよね。

反論1: そもそも先に書いたように、mov調査では「10〜20代の店検索でも1位は検索エンジン」だったわけです。「ググらない世代」というラベルは、現実の使い分け行動を単純化しすぎている。

反論2: Benedict Evans が2024年7月に書いた “The AI Summer”で、「数億人がChatGPTを試したが、多くは戻ってきていない」と指摘しています。LLMは”製品”に見えるが実は罠で、product-market fitの遅い旅が必要だ、と。AI検索が定着したと判断するのは、まだ早いかもしれない。

反論3: Gartnerが2024年2月に、「2026年までに従来型検索エンジンのボリュームは25%減少する」と予測したんですが、2024年時点でこの予測が実現する確たる兆候はないとの留保もついていました。

これらを踏まえて、僕の見立てを修正します。「ググらない世代」ではなく、「ググるだけでは満足しない世代」が正確だと思います。Googleは引き続き使う。ただしそれは数あるチャネルの一つで、用途によって最適なチャネルに切り替える前提になっている。

ただ、それでも お店をInstagramで調べる という行動は、僕の世代にとっては明確に新しいものでした。これは事実として認めていいと思っています。


分析 — タイパじゃない、「自分の感覚に直接アクセスする」だった

ここから記事の核心です。

上の世代は若者の行動を「タイパタイムパフォーマンス」で説明したがります。倍速視聴、要約消費、ショート動画—全部「効率最適化」の文脈で語られる。

でも、当事者の声は違うんです。

SHIBUYA109 lab. が2024年9月25日に発表した調査(一都三県15〜24歳461名、2024年8月実施)では、衝撃的な結果が出ています。Web担当者Forumの解説記事によると、「『タイパ』という言葉を日常的に使うか」に「あてはまらない」と答えたZ世代は74.6%。さらに、効率化の理由TOP2は「自分の好きなことをする時間を捻出するため」(51.6%)と「1人の時間を作るため」(45.3%)で、プレスリリース本体でも約7割が「何もしない時間が欲しい」と回答していることが報告されている。

これ、すごい逆説なんですよね。当事者は「タイパ」という言葉を使わないし、効率化の目的もタスク消化ではなく「余白の捻出」なんです。

そう考えると、お店をInstagramで調べる行動も、ChatGPTで質問する行動も、「タイパ」という大人側のフレームでは捉え損ねている気がしてきます。

僕なりに置き直すと、こうなる。

Instagramでお店を調べるのは、効率じゃなく「写真の方が信用できる」から。 他人がテキストで言語化した評価よりも、実物の視覚情報の方が、自分の感覚に近い形で届く。判断の起点が「他者の評価」から「自分の感覚」に移っている。

ChatGPTに聞くのは、時短じゃなく「人に質問する社会的コストがゼロ」だから。 前回の「ググれカス」の心理学で書いた、ハイパフォーマー罰(質問を受ける専門家側が消耗する構造)を回避できる。質問する側にも「相手の時間を奪った」罪悪感が発生しない。

つまり「ググる」が必要としていた4つの労力(言語化・キーワード設計・ノイズ排除・読み比べ)は、若い世代にとっては 「他人の言葉に翻訳する不純な作業」 だった可能性があるんです。彼らはそれを省略して、自分の感覚と情報源の間に余計なフィルタを挟まない選択をしているだけ。

ここが前回の記事と本当に対になる地点だと思っています。専門家側の疲弊と、若い世代の行動は、同じ構造の表と裏なんですよね。

「ググれ」と言いたくなる側は時間境界の侵害から自分を守るためにそう言う。「ググる」が通じない側は、他人の言葉に翻訳された情報より自分の感覚に直接届く情報を選んでいる。両者とも、「人を介した情報のやり取り」のコストから降りようとしている点では同じ方向を向いている。


僕の次の一手 — 「AI×リサーチ」の複合に振る

最後に、自分の話に戻します。

ここで「30代の僕も取り残されるかもしれない」みたいに一般化して締めることもできるんですが、それはしません。なぜなら、僕個人にとっての次の手はもう見えているから。

僕の方針はシンプルです。

– 「ググる」だけで終わる検索行動は捨てる
– SNSは「雰囲気を取りに行く道具」として割り切って使う
コア作業は「AI×リサーチ」の複合に振る

具体的には、たとえば今回のジャーナル執筆そのものでこれを実証しています。Claude Codeに並列で4つのリサーチエージェントを投げて、Z世代の検索行動・タイパと注意持続時間・検索進化の理論史・日本の生データ、を同時に集めてもらった。各エージェントが一次ソースのURLと数値をセットで返してくる。僕はその結果を統合して、構成案に落とし、こうして本文を書いている。

「ググる」が必要としていた4労力(言語化・キーワード設計・ノイズ排除・読み比べ)を、AIに圧縮させて、自分は人間にしか出せない判断と統合に時間を使う。これが今の僕のやり方です。

これは若い世代の「Instagramで雰囲気、ChatGPTで質問」の劣化コピーじゃなくて、30代独立エンジニアの僕が、自分の作業環境だからこそ取れるもう一つの選択肢だと思っています。エンタープライズ開発の経験で「複数情報源の統合」は身に染みていて、その上にAI実装スキルを重ねられる立場にいる。これを使わない手はない。

「ググる」が動詞になった2006年から約20年。次の動詞が何になるかは、まだ知りません。でも少なくとも 僕の次は「AIに聞いて構造化させ、自分が選ぶ」 になる。

「ググるが通じない世代」を観察したら、自分の次の動き方まで見えてきた。リサーチって、そういう副作用があるから面白いんですよね。

FAQ

「Z世代はググらない」って本当ですか?

正確には「ググらない」のではなく「ググるだけでは終わらない」です。mov調査では10〜20代でも店検索の1位は検索エンジンでしたが、飲食店に絞ると同年代の1位はGoogleマップに転換し、SHIBUYA109 lab.の調査では女性Z世代の場所探しで検索エンジンが5位(28.8%)、Instagramが1位(64.6%)に落ち着いています。検索エンジンは引き続き使われるが、ジャンルによって最適なチャネルに切り替える前提になっているのが実態です。

AI検索ばかりに頼って、深く調べる力は育つんですか?

これは正直、まだ判断材料が揃っていない論点だと思います。CHI 2023の研究では、Z世代は情報リテラシー戦略を知っていても使わない傾向が指摘されており、「能動的に探す力」が縮退する懸念は学術的にもあります。一方で、AIは「再質問」を許容するので、対話を通じた深掘りはむしろ可能になる側面もあります。今後10年の追跡データが必要な領域です。

お店をInstagramで調べる行動は、本当に「検索」と呼べるんですか?

呼べると思います。学術的にも対話的検索(Conversational Information Seeking)として体系的に研究されていて、検索の意味自体が「キーワード→青リンク」から拡張されています。「タグる」「タブる」のような新しい動詞が話題に上るのも、行為の本質が検索でありつつも、従来の「ググる」では収まらない範囲に広がっている兆しだと思います。

30代以上は若い世代の情報収集を真似た方がいいですか?

そのまま真似するより、自分の作業環境に合わせて再構成する方が現実的だと思います。僕の場合は「SNSは雰囲気取り、AIは並列リサーチで構造化、Googleは引用元として残す」という形に落としました。Z世代の行動パターンは彼らの環境(モバイル中心・社会的文脈・可処分時間の構造)に最適化されたもので、PC中心で長時間集中する大人の作業環境にはそのまま移植できないことが多い。フレームを借りて、自分のレイヤーで実装し直すのがおすすめです。

この記事が参考になったら

Share